不安を手放す第一歩。ネガティブな思考パターンに気づく練習
忙しい毎日、ついつい考えてしまう「不安」の正体
日々の家事や育児、仕事など、私たちは多くの役割をこなし、忙しく過ごしています。時には、漠然とした不安を感じたり、「このままで大丈夫かな」と立ち止まってしまったりすることもあるかもしれません。
こうした不安やネガティブな気持ちは、様々な要因から生まれますが、実は私たちの「考え方」のクセ、つまり「思考パターン」が大きく影響していることがあります。
無意識のうちに繰り返されるネガティブな思考パターンに気づくことは、心の負担を減らし、不安を手放していくための大切な第一歩となります。ここでは、その「気づく」ための具体的な練習方法を、忙しい日々の合間にも取り入れやすい形でご紹介します。
あなたの思考パターンに「気づく」とはどういうことか
私たちの頭の中では、常に様々な考えが巡っています。その中には、過去の後悔、未来への心配、自分自身や他人への評価など、ネガティブな方向に向かいやすいものも少なくありません。
例えば、
- 何か問題が起きた時に、「やっぱり自分はダメだ」と自分を責めてしまう
- まだ起こってもいないことに対して、「きっと最悪の結果になるだろう」と決めつけてしまう
- 「~であるべきだ」という理想にとらわれ、少しでも外れると不安になる
このような考え方が、知らず知らずのうちに心の習慣となり、ネガティブな感情を生み出していることがあります。
思考パターンに「気づく」とは、こうした頭の中のつぶやきや考え方のクセを、まるで他人のことのように、少し離れたところから客観的に観察してみるということです。
日々の生活でできる「思考に気づく」練習
「思考パターンに気づく」と聞くと、難しく感じるかもしれませんが、特別な時間や場所は必要ありません。日々の生活の中で、少し意識を変えるだけで実践できます。
1. 頭の中を「実況中継」してみる
簡単な方法の一つは、自分の頭の中で考えていることを、心の中で「実況中継」してみるイメージを持つことです。
- 「あ、今、今日の夕食のことで『面倒だな』と考えているな」
- 「電車が遅れて、『時間がもったいない』とイライラしているな」
- 「子供が泣き止まなくて、『自分は良い母親じゃないかも』と思っているな」
このように、思考が浮かんできたら、それを良い悪いと判断せず、「今、自分はこう考えているんだな」と淡々と認識してみてください。慣れてきたら、手帳やスマホのメモに、気づいた思考を簡単に書き出してみるのも良い練習になります。例えば、「夕食準備→面倒」「電車→イライラ」「子供→自分ダメ」のようにキーワードだけでも構いません。
2. ネガティブな思考の「トリガー」を探る
どのような状況や感情が、ネガティブな思考のきっかけ(トリガー)になっているのかを探ることも有効です。
- 疲れている時や睡眠不足の時にネガティブになりやすいか
- 特定のニュースやSNSを見た後に不安を感じやすいか
- 誰かとの会話の後、自分を責めるような考えが浮かびやすいか
日々の出来事と、それに続く思考や感情のパターンを少し観察してみましょう。トリガーが分かれば、「この状況ではネガティブになりやすいから、少し休憩しよう」「このタイプの情報は、今は見るのをやめておこう」といった対策を取りやすくなります。家事の合間や、通勤・買い物の移動中など、少しぼんやりする時間に「そういえば、さっきあんなことを考えたのは、〇〇の後だったな」と思い返してみることから始められます。
3. その思考は「事実」か「解釈」か問いかける
ネガティブな思考が浮かんだ時に、「これは客観的な事実だろうか?それとも、私の個人的な解釈や感情だろうか?」と、心の中で静かに問いかけてみる練習です。
例えば、「誰も私のことを分かってくれない」という思考が浮かんだとします。これは、本当に「誰も」あなたのことを「全く」分かっていないという「事実」でしょうか。それとも、「分かってほしいという気持ちが満たされない」というあなたの「解釈」や「感情」でしょうか。
このように問いかけることで、思考と自分自身の間に少し距離が生まれ、思考に感情的に巻き込まれすぎるのを防ぐことができます。
4. 思考に「名前」をつけてみる
これは少し遊び心のある方法ですが、繰り返し現れるネガティブな思考パターンに、ニックネームをつけてみるのも効果的です。
- 「どうせ自分なんて、と考えてしまうのは『どうせ星人』だ」
- 「先のことをあれこれ心配しすぎるのは『心配オバケ』が出たな」
- 「完璧でないと許せないのは『べきべきモード』だ」
名前をつけて客観視することで、深刻に捉えすぎず、「また『どうせ星人』が出てきたな。まあ、いつものことだ」と、少し軽く受け流せるようになります。
完璧を目指さず、小さな一歩から
これらの練習は、どれもすぐに完璧にできる必要はありません。最初のうちは、ネガティブな思考に気づくことすら難しいと感じるかもしれません。それでも大丈夫です。
「あ、今、ネガティブなことを考えていたな」と、ほんの一瞬でも気づけたなら、それは大きな一歩です。その気づきを、責めるのではなく、「気づけたね、すごいね」と優しく受け止めてあげてください。
忙しい毎日のほんの数秒、数分でも構いません。歯磨き中、休憩時間、寝る前など、隙間時間を見つけて、「今、何を考えているかな?」と自分に問いかけてみましょう。
気づきが未来を変える力になる
ネガティブな思考パターンに気づくことは、それ自体が目的ではありません。気づくことで、私たちは自分の心の動きを理解し、思考に振り回されるのではなく、自分で思考を選び取る力を少しずつ養っていくことができます。
この小さな練習を続けることで、いつの間にか心の習慣が変わり始め、ネガティブな感情に囚われにくくなり、漠然とした不安も少しずつ手放せるようになるでしょう。
今日から、あなたの頭の中の「実況中継」を始めてみませんか。それは、ポジティブな未来への、優しく確かな第一歩になるはずです。